杉本彩さんブログ 2017-12-5より転載
https://ameblo.jp/sugimoto-aya/entry-12333822704.html
11月28日 東京地方裁判所第429号法廷で開催された、刑事第15部
大矢誠の猫13匹虐待事件の傍聴を終え、改めて法廷内の様子と裁判の内容を
レポートいたします。
私の感想も書き添えますが、強い動物愛護精神がゆえのものではなく、
おそらく誰もがそう感じるであろう客観的視点に立ち、
激しい感情をなるべく交えないよう努めたいと思います。
まず、傍聴券に外れてしまった私に、傍聴券を譲りたいと申し出て託してくださった
獣医師の先生に心よりお礼を申し上げます。
傍聴券は数枚必要でしたので、もう一枚は出版社の記者の方から頂くことができました。
その時のお約束が、詳細なレポートは雑誌の発売日までは控えるというものでしたので
発信が本日になりました。
[大矢誠 初公判 傍聴を終えてのレポート]
1年10ヶ月の求刑、判決は12月12日13時30分から法廷にて言い渡されます。
この求刑は非常に軽いと言わざるを得ません。
今回の裁判で問われている犯行は併合罪です。
※併合罪とは、確定判決を経ていない2個以上の罪を意味します
2個以上の罪で懲役にするとき、「一番重い罪の1.5倍」が原則となります。
今回の犯行13件はすべて動愛法違反なので、一番重い罪は2年。
ですから、1.5倍の3年を求刑することが可能となります。
併合罪の計算については、刑法に以下の条文があります。
(有期の懲役及び禁錮の加重)
第四七条 併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは
その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。
ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。
まず、この求刑に納得いかないのは、猫を虐待死させたやり方が
あまりに凄惨きわまりないものであることに加え
被告人の後悔や懺悔の念、反省がまったく伝わってこなかったからです。
被告人、大矢誠は、終始冷静で淡々としており、やつれたり疲れたり、緊張している様子も見られませんでした。
最初に裁判官から名前と生年月日、大矢誠 昭和40年8月24日
元税理士で現在は無職であることを確認されました。
検察側から、起訴状が読み上げられ、13匹の猫たち(9匹死亡・4匹重体)がどのように殺され傷つけられたのかが明らかにされました。
捕獲器で猫を捕獲し、バーナーで火あぶりにし、熱湯をかける。
捕獲器にバクチクを投げ入れ、熱湯をかける。
パイプにロープをかけて猫の首を吊り、熱湯をかける。
いずれも猟奇的な残酷なやり方で猫を殺し続けました。
獣医師の調書によると、死亡の原因は、多臓器不全によるショック死と
二度以上の熱傷による死亡とのこと。
どれだけ痛み苦しんで死んでいったことか、、、
私たちの想像をはるかに超える地獄の苦しみだったことに間違いはありません。
その後、裁判官から大矢に対して「話したくなければ話さなくてもよいが、すべては記録され、有利にも不利にも働く」という黙秘権について説明されました。
大矢は、公訴事実をすべて認め、証拠品の提出や取り調べにも
協力的であったようです。
その証拠品である自宅から押収されたパソコンに、数々の虐待動画が
残っていたということです。
押収された捕獲器の提出、殺害した猫を棄てた場所などの供述もあり
殺害の動機については、最初は駆除をするためだったが、途中から
動画で記録することが目的になり、駆除は虐待動画を撮影するための
言い訳であったと供述しています。
次に弁護人は、このような行為に至る幼少期の背景をしたためた
被告人 大矢の母親からの陳述書と、被告人からの反省文とお詫びの陳述書が裁判官に
渡されました。
その内容は明らかにされませんでした。
次に、弁護人からの質問に対する大矢の答えです。
初めて猫に危害を加えたのは平成28年3月頃。
それ以前に猫に危害を加えたことはない、と大矢は答えましたが
初めての虐待でいきなり動画を撮影するとは考えられません。
虐待を繰り返し行なっていて、それがエスカレートした結果の動画撮影であると
私は考えます。
何故なら、それが犯罪パターンの典型だからです。
動画を残し公開したことで犯罪が発覚しただけ。
以前より犯行を繰り返している、と考えるべきです。
何しろ、被告は「動物虐待愛好家」という非人間的な連中が集まるサイトに自らも集い
英雄視されているわけですから。
しかし、次の質問においても、猫以外の犬、すべての動物に危害を加えたことはない、と答えています。
猫に対する感情は、以前は、好きでもなく嫌いでもない。
なぜ危害を加えたかの質問には、埼玉県深谷市に引っ越してきて猫の糞尿被害に困り
猫よけスプレーなどの対策を講じたが効果がなかったので、平成28年2月頃に捕獲器を
ネットで購入。
私は、誰でも簡単に捕獲器を購入できるのも問題と以前より感じています。
引っ越す前見沼区の自宅では、猫の糞尿被害の対策として、捕獲器で猫を捕獲して
家から遠くに放すということを繰り返し、当初10匹以上の猫を遠くに放した
と大矢は答えています。
それにしても、どこに行ってもこれほど猫の糞尿被害に合い続けるものでしょうか。
大矢は、こう述べました。
「猫被害」「猫よけ」というワードで検索をしたら、残虐な情報がたくさん目に入るようになった。
海外のほうが、より残虐な情報が上がっていた。
このような答えを引き出すような質問を弁護人がしています。
平成27年の夏頃からウェブ検索して見るようになり、段々、感情が悪化していった
ほぼ毎日情報を見るようになった。
その後、猫に指を噛まれ、完治まで1ヶ月かかり、仕事にも支障を来たしたことから
猫に対する憎しみが湧いてきたが、その時点では駆除は考えなかった。
あくまでも、見沼区の自宅では遠くに放して問題を解決していた、と主張しています。
しかし、埼玉県深谷市では、管理しているハウス内を荒らされるなどの問題があり、当初は捕獲して遠くに放そうと思ったが、猫が戻ってくると思い
また、放した先に被害が出てはいけないと思い
平成28年3月に最初に捕獲した猫に危害を加えたという趣旨を述べました。
猫に熱湯をかけた理由については、動画でそういう虐待を見たから。
素手で殺すわけにもいかず、刃物もなかったため、と平然と悪びれる様子もなく
答えたことが、とても印象的であり、ぞっとしました。
その時の気持ちを弁護人から訊かれると、最初は抵抗があったが、手を噛まれたり
糞尿被害もあり、また、1ヶ月経って治りかけていた噛まれた傷の爪のあたりにまだ痛みがあり、さらにウェブ情報から受けた残虐な情報の影響で、殺めることに抵抗がなくなった、、、
という、すべてが猫のせい、ウェブ情報のせいにした責任転嫁の発言は、自分の罪を軽減したい大矢のお粗末な自己弁護としか思えません。
大変に見苦しい、聞き苦しいものでありました。
さらに、動画を撮影したのは何故か、という弁護人の質問には、ウェブの動画を見ていたからで、日頃から撮影して記録ということもあったから。
また、猫への恨みもあった。検索した動画を見ていたことで、記録することに抵抗感がなくなった、と答えています。
ネット上にアップした理由については、熱湯をかけた動画を見て残虐さを比較したいという気持ちになった。
比較したい理由は?
この問いには、ウェブのせいだけではなく、自分の至らなさにあったと思う、とよくわからない答えでした。
「自分の至らなさ」ではなく、良心や善意を持たない、同情や共感などの感情もない
サイコパスな人間だからでしょう
動画をアップしてから2日で1000件くらいの反応があり、頻繁に反応があったと思われます。
その時の気持ちを弁護人から訊かれると、「もっとやれ!」という反応だったため
抵抗感が薄れていった、と答えています。
続けて当時の気持ちを訊かれると、ネットに掲載することで恨みを晴らしたい、という
感情だったと答えました。
現在の心境について弁護人から訊かれると、「猫に詫びたい、動画を見て心を痛めた方々にもお詫び申し上げるしかない。人間にたとえて考えたら、非常に苦痛なことだ」
そして、署名が多く集まっていることを知っているか訊ねられると
「知っています。心痛めた方々に贖罪の気持ちをもっていきたい。
命をもつものに対してどんな命も軽んじてはいけない」と、まったく言葉に温度の感じられない、弁護人と打合せ通りと思われる弁を述べました。
続いて検察側と大矢のやり取りです。
検察 : 糞尿被害に対して今ならどうするか?
大矢 : 今なら保健所に連絡するしか思い浮かばない
検察 : 当時は保健所は考えなかったのか?
大矢 : 当時も考えたが、短絡的に殺してしまおうと思った
検察 : 動画を何度も見返した目的は?
大矢 : 最初は噛まれたことへの復讐
検察 : 見返している時の気持ちは?
大矢 : 気分が良いものではなかった
検察 : 気分が良くないのに何故やめなかったのか?
大矢 : 抵抗感が薄れていった(今まではすらすらと話していましたが、
この回答の時には言葉を見つけるのに少々間がありました。想定していなかったのかもしれません)
検察 : 犯行がエスカレートしたのは何故か?
大矢 : 書き込みや情報にたくさん触れたから。猫が苦しくてもかまわない、という気持ちになった
検察 : 何万通もの署名に対してどう思うか?
大矢 : 社会に影響を与えた認識がある。命の尊厳に対する希薄さがあった
と以上のようなやり取りがありました。
「命の尊厳」という言葉を選んできたのには大きな違和感を感じずにいられません。
「命の尊厳」などという精神と真逆に生きてきた大矢からは、死んでも発せられる言葉ではないと思います。
弁護人のアドバイスか、はたまた、得意のウェブで検索して選んだ言葉なのか、それを知る術はありませんが、とにかく心にもないことを言っていることは確か、という印象です。
これは、私の偏った見方では決してありません。
おそらく、あの傍聴席にいた人全員がそう感じたのではないでしょうか。
税理士という職業柄、整然と話すことは得意なのかもしれませんが
終始通り一遍の反省と謝罪の弁を述べるだけで、そこにはなんの人間的な気持ちも存在していないように感じました。
続いて、裁判官からも改めて質問が、、、。
裁判官 : 最初は気分が良くなかったが、後半は気持ち良かったのか?
大矢 : 気分のいいものではないが、いくらかはそういう部分もあったかもしれない。
残虐なことをしてネットに上げることが目的になり、猫の被害にあったというのを言い訳にしながらやっていた部分もある。許されると思った
裁判官 : 現在、無職ということで仕事はどうするのか?
大矢 : 税理士は辞めた。現在、就職活動の情報を集めている
裁判官 : 怪文書が撒かれたりしているようだが? 生活に支障は?
大矢 : 今も怪文書の被害がある。出歩くのに支障はないが、私を監視している人がいるようだ
という裁判官とのやり取りがありました。
私は裁判の傍聴が初めてなので他の裁判と比較することができませんが
レポートは淡々と書いていますが、裁判官の問いかけには随分と温情があるような印象を受けました。
これはこの裁判に限ったものなのか、それとも日本独特のものなのか
他の先進国はどうなのか、非常に気になりました。
これも比較対象がないので特別そうだったのかはわからないですが
ドラマや映画であるような熱い裁判という要素はまったくなく、検察側、弁護側、にも
温度のあるやり取りや展開はなく、すべてが予定調和的な印象でした。
検察側から求刑にあたり述べられた見解は以下です。
常習的犯行は明らかで、13匹の猫への犯行は、あらかじめ計画的で悪質。
駆除目的とは考えられず、楽しみながら虐待し、犯行後は不特定多数が閲覧できるよう
ネットに動画を掲載し、人々の心に傷を負わせた。厳正な処罰を求める。
そして、懲役1年10ヶ月が求刑されました。
最後に、情状酌量を求め、弁護人からは以下のような発言が、、、。
被告人は、税理士として社会の中で一定の地位を築き、社会に貢献してきた。猫の被害や怪我を負うなどがなければ、本来であれば犯罪とは無関係の人間だ。
さらに、以前起こった動物虐待事件の事例を3件持ち出し、そのうちの一件(おそらく2002年の福岡で虐殺された こげんたちゃん事件のこと)が類似事件だと説明し、それを参考にすべきと進言。
そして、現行法においては、動愛法は器物損壊罪を下回るものであるから
執行猶予をつけるべき、と、弁護人のあり得ない進言には、いくら弁護が仕事だからとはいえ、ものには常識と限度があるだろうと怒りを禁じ得ませんでした。
ちなみに「こげんたちゃん事件」の犯人 松原潤には、たった懲役6ヶ月の求刑に
3年の執行猶予がついただけのようで、15年も前の、さらに動愛法が未整備で
未熟だった時代の判決を参考にしろとは、呆れて空いた口が塞がらないです。
被告人 大矢誠の、無様で稚拙な自己弁護、弁護人の強引な弁護が、裁判官にはどのように受け取られるのか、12月12日の判決が注目されます。
とにかく、この傍聴を通じて、来年の法改正が厳格に大きく改正されるべきだと
いっそう思いを強くいたしました。
そして、「動物虐待愛好家」と称してネットで集うクズどもは、顔も名前も明かさず
強いものにはもの言わず、もっとも弱い動物にのみ強気になる。
自らを ヘタレ の犯罪者と名乗っているようなもので、大矢も少なからずそういう連中に煽られて、歪んだ自己承認欲求を満足させるべく、犯行をエスカレートさせていったことは、法廷での大矢の供述からも間違いないわけです。
これらを考えると、煽った連中の罪もあるわけで
幇助罪(ほうじょざい)の適応が急務です。
12月12日の判決の結果次第で、今後の動物虐待犯 予備軍の動向は
変わるはず。
動物虐待・殺傷は、殺人や傷害事件など人への犯行の前兆であることは
周知の事実です。
サイコパスな人間の変質的な欲望による犯罪を抑止するためにも
最低限、執行猶予無しの懲役に処するべきと思います。
動物虐待犯に対して緩い判決は、子どもや高齢者をはじめ、非力なものを危険にさらすのと同じこと。
司法国家は法律に従うのが当たり前なのは重々承知ですが
しかし、その法律は、けして完璧ではなく隙だらけ。
現行の法律が未熟であることを前提に、動物虐待の人への危険度と深刻さを熟慮した
人の心に添う判決であってほしいと願います。
【裁判 後記】
一時間の法廷でした。
この裁判は、厳罰を望む署名が162,000人以上も集まり、かなり注目されました。
人々に怒りと憎しみと悲しみの感情を強く刻みつけるほどの衝撃的かつ
悪質な事件だったことから、異例の警備法廷となりました。
傍聴席に座るまで、持ち物やボディチェックが3回あり、相当な厳戒体制でした。
この犯人をある意味守るための厳戒体制であることに、正直、違和感を覚えました。
傍聴席に持ち込めるものはノートとペンの筆記用具のみ。
裁判はかなりのスピードで進んでいきます。
すべてを聞き逃すまいと必死にペンを走らせました。
どのように裁判が進み、どのようなやり取りが行われたのか、求刑に至るまでの詳細な
流れと様子を、傍聴できなかった方々にもできるかぎりお伝えできるよう努めようと思いました。
私の温度感をなるべく文章にのせないように努めることで、より裁判の温度や空気が伝わるのではないかと思いました。
レポートの中で時々挟んだ私の見解には、この裁判の印象を左右しない程度に感想を添えているつもりです。
皆さんには、さらに、この裁判の判決に注目していただき
声なき猫たちの代弁者となって、厳罰を求め声をあげていただけるよう
お願いいたします。
このブログ記事の裁判のレポートが、多くの方の目に留まりますように。
公益財団法人動物環境・福祉協会Eva
理事長 杉本 彩
杉本彩さんブログ 2017-12-15より転載
https://ameblo.jp/sugimoto-aya/entry-12336460026.html
12月12日 東京地方裁判所第429号法廷で開催された、刑事第15部
大矢誠の猫13匹虐待事件の判決を傍聴してきました。
私たち公益財団法人動物環境・福祉協会Evaはみんな傍聴券の抽選から外れましたが
手に入れた方々が次々にお譲りくださるとお申し出があり
私もEva事務局も傍聴する事ができました。
お譲りくださった皆さま本当にありがとうございました。
以下、判決の傍聴記録です。
主文
1 被告人を懲役1年10月に処する。
2 この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。
被告人は、28年3月26日から29年4月17日まで、深谷市内で猫を捕獲して捕獲器に閉じ込め熱湯をかけるなどして9件の殺害と4匹の傷害を負わせた。
被告人は、捕獲器で猫を捕獲しバーナーで焼き熱湯をかけたり、パイプのロープに吊るした猫に熱湯をかけるなど、誠に残虐性なもので常習的犯行である。
被告人は、多くの猫の命を奪い、凄惨な映像を流し人々の心に傷を負わせた。これにより裁判所には、非常に多くの厳罰を求める嘆願書が寄せられた。本件が社会に与えた影響は大きい。
被告人は、猫に手を噛まれ、仕事に支障をきたしたという猫への悪感情から感化され、駆除行為として猫を殺したが、駆除とは言えない残虐なやり方で犯行を繰り返すうち、虐待行為自体に楽しみを覚え、ネットで公開することが目的化していた。
動画の残虐さを比較するため、ネットで煽られたためとし、虐待した様子を撮影した動画をインターネット上で公開する行為は、犯行を正当化する余地はなく動物愛護の精神に反する悪質なものである。
被告人は、これまで前科なく生活をし、国税局職員を経て税理士の職についていたが、本件について広く報道され税理士の職業は廃業に至った。
職場や自宅には、嫌がらせや書き込み、危害予告などさまざまな制裁を受けているとの弁護人の指摘も否定できない。
また罪を認めると共に贖罪の気持ちから動物愛護団体に寄付をした。
以上のことから執行猶予に相当するが、残虐で悪質なことから執行猶予期間は長期間とすべきであり、4年とする。
この判決に不服があるのなら2週間以内に控訴してください。
※ 以上が判決の内容です。
今まで動物虐待事犯において、実刑判決が下った前例がないことを考えると
予想通りの判決でした。
この判決は、事件の残忍さや悪質性に相当するものではまったくありません。
厳罰を求めてきた世論の感情から、かけ離れた判決と言えるでしょう。
しかし、裁判官の言葉からは、この事件が凶悪性の高いものだという認識があることが
伝わってきました。
では、なぜ、そのような深刻な事犯だとわかっている動物殺害犯に実刑が下らないのか、、、
それは、実刑を科せられるのは、法定刑が「重罪」に
分類される3年以上の懲役に限られるからです。
現行法では、動物の殺傷は、
2年以下の懲役、または200万円以下の罰金です。
動物虐待が「重罪」であると法定刑が示していないわけです。
検察も裁判官も、動物虐待が凶悪で深刻なものだとどれだけ認識していても、
司法の下では、この法定刑の基準に従って裁くしかない、というのが現状。
私はこの裁判で、現行の動物愛護法の限界を痛切に感じました。
3年以下の懲役である器物損壊罪より、動物虐待は軽い罪だと
法定刑が示しているのです。
そんなおかしな法律の下、厳正な判決が下りるわけもない。
なぜ、前回の法改正で動物殺傷が1年から2年にしか引き上げられなかったのか、、、、
罰則の引上げについて、2012年の改正時に、当時は野党だった自民党からは
器物損壊罪並みの3年以下の懲役を求める声があったようですが、
与野党協議の結果、他の犯罪の法定刑と横並びで2年以下の懲役に留まったそうです。
そのため、与野党の関係者の間では、次の法改正(来年の法改正)の際には
3年以下の懲役に引き上げようという意見で概ね一致していたとのこと。
法定刑を3年以下の懲役に引き上げることで、法定刑の上限の懲役3年で求刑すれば
その半分(1年6か月)の実刑判決を得ることはできない訳ではないようです。
しかし、実務上、法定刑の上限で求刑することは、情状の余地が全く無く
社会的制裁を受けていない等の特段の事情が無い限り困難だということ。
ですから、法定刑は余裕を持って、少なくとも5年以下の懲役としておかないと
実刑判決を得ることは難しくなります。
だからこそ、当協会Evaは、法改正に臨む議連PTの中で法定刑を
「5年以下の懲役、500万円以下の罰金」に引き上げてほしいと
再三に渡り議員の方々に要望しています。
実は、前回(2012年)の法改正の際に、当時与党だった
民主党のワーキングチームにおいて、警察庁は動愛法の
厳罰化の方針に賛同していたそうです。
警察庁は、動物虐待について深刻な犯罪であると認識しているのですが、
法定刑がより厳しい他の生活経済事犯
(風営法とか廃棄物処理法とか)の取締りに人員を
取られてしまうため、動愛法にまで手が回らないのが現状です。
だからこそ、動愛法の罰則をより厳格化することで、
動物虐待は「重罪」という法のお墨付きが与えられることにより
現場での取締りをより着実に行うことができるようになるのです。
取締りが行われるようになれば、犯罪の抑止につながるはず。
この判決を受け、来年の法改正の厳罰化を求める声が益々高まってくれることを
願っています。
判決後、署名を呼び掛けた綿引静香さん、佐藤光子弁護士と3名で司法記者クラブにて
記者会見を行いました。
以下のEvaサイトからは会見の動画も見られます。